我々の研究室では電子相関の強い系における物性、主として超伝導と熱電効果に関する理論的研究を行っている。
一般に電子間相互作用が運動エネルギーに比べて大きくなると、平均場近似による取り扱いが不十分になり、いわゆる電子相関の効果が重要になる。銅酸化物高温超伝導の発見により、電子相関を起源とする超伝導の可能性が精力的に調べられ、超伝導のみならず広く物性における電子相関効果の問題に対する感心が一気に高った。
一方、従来から知られているように一体のバンド効果(フェルミ面の形状の効果)もまた、物性決定の重要な要因であることは確かである。我々の研究室では、多体の電子相関効果と、一体のバンド効果が絡みあって生まれる新規な物性、特に超伝導と熱電効果に興味を持って研究している。
[最近の研究の主な柱]
- 電子間斥力を起源として超伝導が起こった場合、従来型の超伝導とは異なった種類の超伝導になる可能性が高い。実際、銅酸化物高温超伝導体ではd波超伝導になっていることが実験的にほぼ確定している。我々は実験的に非従来型ペアリングの可能性が指摘されているコバルト酸化物NaxCoO2や有機物(kappa-(BEDT-TTF)2X,(TMTSF)2X)において、電子相関とバンド構造の相乗効果から生まれる非従来型超伝導の可能性について調べている。
- より高い臨界温度を持つ超伝導の探索に関する研究:電子相関に起因する超伝導においては、フォノンのエネルギースケールによる制限はなくなるものの、異方的ペアリングになるためにギャップがフェルミ面上で0になるところ(節)が生じ、これが臨界温度を下げる要因になっていると考えられる。我々は、電子相関を起源にしつつも、フェルミ面上のいたるところでギャップが生じるような格子構造(バンド構造)を提案し、そのような系では超伝導臨界温度が極めて高くなる可能性があることを示した。
- 物質に温度勾配を与えると温度差に比例した起電力が生じる。これをゼーベック効果という。熱を電気に変換できる効果であるから、応用上も重要な現象である。我々は、熱電変換効率を高めるのに有利なバンド形状「プリン型バンド」を提唱し、NaxCoO2を初めとする熱電酸化物に適用して、実験結果を説明することに成功している。
[研究の方法]
有限系のモデルに対する量子モンテカルロ法等の数値計算、及び、Fluctuation exchange近似等の解析的な扱い(解析的とはいえ、実際にはかなり大規模な数値計算となる)による計算を行っている。また、第一原理バンド計算を行い、そこから微視的理論計算に用いるための正確なモデル・ハミルトニアンを得ている。
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